蕎麦とお笑いとワタシ
2021年6月2日(水)
「その感覚だけはよくわからんわ・・・」とカミサンや周りからよく言われるのだが、俺は「蕎麦屋」というお店にはできれば行きたくない。
蕎麦が好きで好きで大好きだ。
あまりに好きで、だからこそ「中途半端な蕎麦だけは食いたくない・・・」という思いから、15年くらい前からお蕎麦屋さんには行きたくなくなってしまった。
冷凍の蕎麦やフードコートの蕎麦、丼もののセットに付いているようなあのむしろ堂々とした「蕎麦っぽいモノ」たちは大好きなのだが、「まずはツユにつけずに、香りを楽しんで」などとのたまう2流3流の蕎麦が大嫌いである。
だいたい裏話的によく聞くのが「お客様の口に合うように」という言い訳。
そいつらが言うのは決まって「自分的にはもっと美味しいモノも作れますけど、マーケティングもありますし」などの情けない自己憐憫やお客様への隠れた批判。
よく聞きますね「日本人に食べやすいフレンチ」みたいなキャッチコピー。
テメーが「フレンチの域」にまで達せなかったクセに、なにが食べやすいだバカヤローですよ。
そんなら「今のところの自分の全力がコレです!でも次に来てもらった時には、今日よりもっと上手く調理できるように頑張ります!」の方がよっぽど応援したくなるわ。
そして、そんな蕎麦より俺が好きで止まないのが「お笑い」である。
大きくくくれば飲食業という中にあるから、蕎麦についてはまだ言葉がある。
しかし「お笑い」という文化については、評論家でもない俺が語れる事などない。事などないが、でも大好きだから精一杯絞り出して吐き出そうと思う。
面白く・・・、ない・・・。
気持ちはわかる。
俺も「流行ってない店のオーナー」だったから、早くそこの「売れてない状態」から抜け出したい気持ちは痛いほどわかるつもりだ。
「自分はホントはもっとできるんです!」「器用なんです!イケてるんです!」、俺もそんな風に思っていたしムダなアピールもしてた。
でもそうじゃなくて、今の自分の弱さとか情けなさとか、そういう隠しておきたいほどのみっともなさをさらけ出して笑ってもらう事こそが「お笑いの本業」なんじゃないだろうか、奥村さん。
動画では「ここのマスターはお笑いに詳しいんですよ!」と紹介されていたけど、俺はお笑いマニアとは違う。劇場に足繁く通うとか、まして評論なんてしたくない。
ただ「お笑い芸人という生き方」を選択した人を尊敬してるし応援したいだけだ。
「蕎麦通」などといわれる輩が全国の蕎麦屋を巡って星つけて評価しているが、それはあまりにも無粋だと思うし、本当の蕎麦好きのやる事じゃあない。ひたむきに蕎麦作ってる人だけを応援する、それだけでイイ。そもそも蕎麦好きっつーのは「粋」であるべきなんだから。
同じように、だから俺もお笑い芸人さんのネタに点数つけたり評価したりなんかしたくない。
奥村さんは、今せっっっっかく「芸人」という生き方を選んだ。
早く現状から抜け出したい気持ちはわかるし、その器用でクレバーな部分を評価されたい気持ちもわかる。俺も若い頃に同じドジを踏んだ。
奥村さんは、まだまだ滑り足りない。もっともっと恥かいて、かっこ悪いとこさらけ出して欲しいと思う。
芸人でもなんでもないただの喫茶店のマスターが偉そうに言うのもなんだが、それでも俺はその生き方を選んだ人が大好きだから。
家族でこのyoutuneを観させていただいたのだが、次女も三女も「ダメね・・・」と酷評。すまん、奥村さん。俺のアドリブも全くウケんかったわ。
しかし、唯一ウケたのが・・・
カミサンの登場シーン。どーなってんだよ・・・
この収録中。
俺と奥村さんはなんとか映像を盛り上げようと頑張っていたのだが、横のキッチンからは「全く意に介せず」で大声オバサントークを繰り広げるカミサンとクリエイティブS女史。
動画を見てもらえればわかるが、俺と奥村さんの会話の途中、突然、お庭やキッズルームの映像が入ってくる。
実はあそこ、オバトークのあまりのうるささに、俺がカメラに映らないように、「だまれ!」と雑巾をシュッっとキッチンに投げ込んでいる。
映らないようにと思ったがどうやらバッチリ写っていたようで、奥村さんが無理やり別の映像をはめ込んでくれているらしい。奥村さん、ホントごめんよ。っていうかソコこそ使えよ。
雑巾投げは、そんな「黙れ!」というサインだったのだが、カミサンもクリエイティブも全く気づかないし、なんならむしろヒートアップ。
「え〜!雑巾?」「なんで雑巾が天井から落ちてきたの〜?」と余計に声がでかくなるオバサンたち。天井から落ちてくるわけないだろ!
この時点ですでに長らく収録してる。
ここからまた最初から撮り直しというのは絶対避けたい。しかしこの大声のオバトークが入ってなければイイが、これは多分ムリだぞ・・・
そこで「頼む!もういい加減にしてくれ!」と、神にもすがる思いで再び雑巾をキッチンへ。第2投目、マスター投げました。
俺と奥村さんの、様々な想いの籠もった2投目の雑巾。
頼む、もうちょっと声を抑えてくれ・・・、気づいてくれ・・・
しかし思いは届かず「え〜、どうして雑巾投げちゃうの〜?」と、出てくるカミサン。そりゃあ面白いわ・・・
お笑いが大好きなマスター、そしてお笑いの世界で頑張る奥村さん。
しかしこの動画で最も笑いをさらっていったのは、俺と奥村さんの想いなど全く意にも介さないカミサンだった。ゴジラかよ。俺も奥村さんも死んだ目してるね。
「蕎麦、好きなんでしょ?食べたらイイじゃん」。
はい、もう食べる事にします・・・。
デリカシー。
そんな言葉、たしか我が家にもかつてはあったような気がします。