そもそも比較するなってお話
2015年12月1日(火)
以前、石見銀山にある群言堂の松場さんと「外食することがココロから楽しめなくなりますよね」という話になった。http://www.gungendo.co.jp/
ほんまソレ。
俺はこの飲食という業界が好きで好きで、そして憧れて入ってきた幸せ者のハズなのだが、実際はココ20年近く「楽しむ」という事は皆無。たとえ好きなお店に入っても、「仕事」の事ばかり考えてしまう。
「このお店イイ感じだな。勉強しに行ってみよう」という状況であろうと、「腹減ったしどこでもイイから入ろう」という状況であろうと、いざそのお店に入ってみると、そこからは飲食業界人の目になってしまう。
勉強熱心というよりもむしろ仕事に追い詰められているだけで、そのお店の良くないトコロが目に付けば「アレ?ウチの店ではちゃんとできてるんかな?」と振り返り、イイ店に入る事が出来ても、それはそれで「ちくしょー!負けてるわ〜」と悔しい気持ちになるし。
あれほど好きだった「外でメシを食う。酒を飲む」という事が、もう全然楽しめなくなってしまっていた。
先日、長崎へ家族旅行へ行った。子供3人連れての強行スケジュール。帰りは全員ヘトヘトであったのだが「どうしても行かせてくれ。後から後悔してしまうから」と途中、佐賀県某所へ寄り道を。そこには「とおりみち」を始めるときに俺がモデルにしたお店があった。
5年前、偶然ネットで見つけたそのお店は当然写真で見ることしか出来なかったが、本当に素敵なお店に見えた。その時「よし、このお店を目指そう」と、ぼんやりながら我が喫茶とおりみちの将来像のフチドリが出来た。
商売や仕事に限らずガイドラインのようなものがなければ、なにかを遂げるのは難しい。俺にあったのはネット上のそのお店の情報だけであったが、それでも20年近く離れていたこの島根で商売をする助けになってくれた。迷った時はこのお店を想った。あくまで勝手な想像で。
それが今回たまたま九州へ行けたのだ。どうしてもそのお店に立ち寄ってみたかった。
電話で予約した時点では満席。到着した時もやはり予約した我々の席しか空いてなく、さすが憧れた店だと嬉しくなった。店内はウチをもっとオシャレにした感じ。注文したお料理もコーヒーもソレ以外もみんな美味しかった。想像したとおりのお店で、やはり来てよかったと想った。キョロキョロしすぎてお店の人に不審がられたのではなかろうか。
そして大収穫だったのが、自分の心境の変化だ。
いつもならすぐに自分の店に帰りたい。このお店のイイところは盗み、フィードバックし、ウチの営業に昇華させたい。だってこのままじゃウチが負けてしまうじゃないか。
でもたぶん、この仕事してきて初めて「あ、負けてない」と思えた。こんな感情は初めてだ、しかも憧れたお店にたいして・・・。
イイお店、良くないお店。どんなトコロに行っても不安感に苛まれていたが、どうやら自分の5年間は間違っていなかったと、このまま頑張っていけばきっととおりみちはイイ店になるぞと、ココロから思えたのは初めてだった。
こちらの御店は素晴らしい。料理も美味しい、雰囲気もステキだ。俺が憧れている事は実際に行った現在だって変わらない。
だけどウチもけっこうイイ店ですよ。ホント、皆さんに来てもらいたい。
具体的にどう思ったの?って話が山ほどありますので、それはぜひ喫茶とおりみちのカウンターにて。
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