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2022-11-14

田舎者とは

2022年11月14日(月)

ランチ。

ご注文を伺いに行くと「ねぇ、この『とおりみち』ってピザ、美味しいの?」と、お客様からお問い合わせ。

 

ほっほ〜

ウチのメニューブックに載っている商品に対して「美味しいの?」とは、なかなかのフランク&失礼。

お客様、今日はお出かけ前にご自宅にデリカシーの類、一切合切をお忘れになってしまったのかな?

 

でも、いいね〜。

俺は観てないんだけど、今、地下格闘技で盛り上がっている『BREAKING DOWN』の記者会見場みたいだな。しょっぱい。

 

でも俺ももう大人。「『美味しい』だなんて滅相もございません。ここの載っているのは『全部フツー』でございますよ」と、寸止めカウンターでお終い。

 

しかし、お帰りのお会計になった際に再び、

「いや〜。マスターはフツーって言うてたけど、『案外』美味しかったじゃないの笑」とお褒めのお言葉。

 

「案外」ね〜、案外か〜。なるほどね〜

 

しかし、ここもキレない。

若い方にはわかりにくいかもしれませんが、こちとら『BREAKING DOWN』よりはるか昔に、TOKIOの『ガチンコファイトクラブ』でこういう免疫力を鍛えておりますのでね。

 

しかし最後の最後の帰り際、「いろんな人が『寄り道』は美味しい、『寄り道』は美味しいって言うから来てあげたんよ」だと。

 

・・・ほう、我が「喫茶とおりみち」を「寄り道」ねぇ。

 

近くに居たカミサンは「しまった!マスターがレジに入ってた!」と急いでレジ担当を替わろうとしてくれていたようだが、いやいや全然大丈夫。もうまんたい。

 

こんなもん、落語ならありふれたお話。このくらいはスマートに切り抜けるっつーの。だいたい俺がどれほど古今亭志ん朝師匠の落語で「粋」ってものを勉強してきたと思ってんの。それに、「寄り道」って覚えてもらっててもそれでイイ。

 

そもそも我々は「山奥にあるただの喫茶店」。

グルメやメディアに消費されるようなファッションな商売はしない。あくまでこの地域に住んでる方々にとっての、「日々の食事のお手間の解消」がウチの存在意義だろう。

 

ご飯作るも片付けもめんどくさいとか、でもコンビニじゃあちょっととか、お友達とお喋りする場所がほしいとか、そういうもっと「食べるという事の『そもそも』」に寄り添った商店でありたい。

食通や非日常の為の場ではなく、あくまで「近所にある喫茶店」。

 

しかし。

この町のキッズたちに「自信を持たせてやりたい」という夢はある。

 

田舎で生まれた子たちは、しばらくするとそこから出ていかなければならない。

身寄りも知り合いも居ない東京や大阪で、しばらくは一人ぼっちで生きていかなければならない。

 

都市に出て孤独で、そんな田舎者の苦しみはよくわかる。

都会で育った同年代に、どこか引け目を感じながらの日々も経験させられるだろう。俺もそうだった。

上手く行かない日々が続き、孤独に草臥れ、目標も自信も失い、つい「何しに都会に出てきたんだろう」と思うだろう。

都会に敗れたように思うかもしれない。自分の生まれた場所、故郷を恨むかもしれない。

 

ウチに通ってくれてるキッズ達よ。

そんな時は、そのへんのパスタのお店に行ってごらん。

もしかしたら「これ、とおりみちの方が美味くねぇか?」と思えるかもしれない。なんなら「とおりみちの方が全然美味いわ!」と思ってくれるかもしれない。

自分で言うのもなんだが、ウチのカミサンのパスタはそこらには負けん。ムチャクチャ美味いからな。

 

この町のキッズたちが都会に出て引け目を感じた時、「イヤ。俺ら田舎者でも負けてないぞ!」と自分を奮い立たせられる燃料のような、そんな商店になるのが俺の夢である。

というか、この町の全事業所はその責務を負って仕事に取り組むべきであり、そこに関しての反対意見にはいくらでも臨むところ。という程度には、想いがある。

 

だから、そんな「案外、美味しいね」や「店名の間違え」くらいのイヤミでいちいち目くじらなんて立てないワケですよ。自称グルメの、「リアル田舎モン」の無礼ごときにはね。

 

ただ、なんか距離感が鬱陶しいのは事実なので、

「へ〜。美味しかったですか、ありがとうございます。ところでアンタ、普段どんなもん食ってんの?え?」とだけお応え。

 

瞬間、カミサンはピッキーン、クリエイティブS女史は片付け中のお皿バッリーン。

店内の雰囲気はちゃんとBREAKING DOWNになってしまっていたが、まぁ知らん。

 

邑南町およびその周辺のキッズたちよ。都会に一歩もイモ引く事は無いからな。

田舎者とは、その出身地の人口や過疎化ではない。どこで暮らそうとも、狭い価値観で生き、さも「ここが世界の中心だ」と信じているような輩こその事を「田舎者」というのだ。

君たちは山陰の寒村の出身ではあるが、田舎者かそうではないかは「自分で選べる」というのを忘れてはならないぞ。

 

営業終わりにみんなでクリスマスの飾り付け。

今年も大きなツリーを出して、冬支度。昔はかったるいと思っていたが、季節を感じる事に喜びも覚えてきた。

 

今年も「左腕骨折、及びメガネ折れ曲がりサンタ」が登場。せっかく色々とカミサンたちが飾り付けしてくれても、結局コイツが面白い。

 

明後日の朝から人間ドック。

去年のポリープ切除を思い出すに、もう今夜から気が重い。

 

 

 

 


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