フェラーリにステッカー貼るかよ?と言ってはいるが
2019年10月24日(木)
大雨が降って、おかげで池の排水の事がわかる。
池は半分埋め立てて底上げをし芝を貼り、そこを中心にして、喫茶とおりみちのあの庭を小さな公園のようにするのが俺とカミサンの当面の目標だ。
そこで問題は「埋め立てた場合、芝の下の地中に水が溜まって湿気がこもらないかどうか?」。そのために水はけを完璧にしておきたい。
今日も「雨の時のが見たかったんだよ」とS社長が来てくれて、様子を見てくれる。全然抜けてない水。S社長も「これはなかなか大変な事になりそうだな・・・」。
どうも池の底面のコンクリートの更に下には、びっしりと粘土質で覆われているらしい。多少コンクリートが割れても、水漏れしないようにするために。
「重機も入らん場所なのに、マスターのおじいちゃん、よくもそこまでやってるな・・・」とS社長。俺にはよくわからんが、すごい事らしい。
それから入れ替わりに、今度は雨どいの修繕を頼んでいるアツシが来てくれた。アツシも「屋根からの雨水がどれくらい池に入っているかを見ておきたくて」らしい。
「これって、池の水が全部は抜けないようになっているんですね・・・」。そう、もしも排水が壊れても、全ての水が無くなってしまわないよう、サイフォンの原理で排水口が設えてある(と、S社長に教わった)。
S社長からもアツシからも、「これは池としては完璧な作り」と言ってもらえた。それは光栄であるし、池を作ったじいちゃんも喜んでくれるだろう。
しかし、じいちゃんが作ってくれたその完璧な池を、今まさに俺が潰そうとしているわけだ。なんかボンクラ三代目あたりが会社をコケさす時みたいな様相もしてきたな・・・。
何年かに一度、従兄弟が勢揃いして昔話をする時があるのだが、俺をイチバン上としてその次のタカヒロは「兄ちゃん、俺たち誰一人イレズミ入れなかったのは、本当に良かったね」と毎回酔っ払って嬉しそうにその話をする。
風習や文化であるタトゥーに誰も文句はないし、なんなら「お、カッコいいじゃないの」と思う時だってある。そして、俺たちも何度も「そういう瞬間」があるにはあった。
だがそこで俺たち従兄弟の誰一人墨を入れなかったのは、「ゼッタイにじいちゃんとばあちゃんが悲しむもん」という共通認識。あの若く大バカ野郎だったはずの俺たちが、無鉄砲で無責任な一歩を踏み出さずに居られたのは、じいちゃんとばあちゃんを悲しませたくないという想いがあったからこそ。
なんでだろうか、あの時の「お前はタトゥー入れないの?」が蘇ってくる。今俺がやろうとしている事は、もしかしてじいちゃんを悲しませてはいないのだろうかと自信が無い。
右にブレ、左にブレる幾歳月。
永らく綱渡りの人生を送っているが、一向に向こう岸にたどり着かないのはいったいどうしてだ。じいちゃん、教えてくれ。