toggle
2016-01-16

温泉卵とプライド

2016年1月15日(金)

新しいオーブンレンジが届いた。スマホのアプリと連動させるとか、ついにうちの店にも21世紀到来。

カミサンが「温泉卵が作れるらしい」と言うが、そんなもんカップにお湯入れてそこに卵割り入れたら別に今までのレンジでだって出来たけど?

「そうじゃなくて、割らないでいけるみたい」

IMG_3573

電子レンジに殻のままの卵・・・。正気の沙汰とは思えんかったが、これが出来た。

今日のまかないは、禁断の「温泉卵のカルボナーラ」。

IMG_3579

ついにウチの店にもこのメニューが並ぶのか・・・。若いころは大嫌いなメニューであったけれど。

 

フランス料理店の技術を見るときに、「鴨のコンフィ」という料理は1つの指針になる。それはだいたい骨付きモモ肉を使用するのだが、その骨の回りに薄皮が一枚残っている事、それが丁寧な温度管理の証拠。信頼できるコンフィを作っている証明になる。

これは「鴨のコンフィ」で画像検索した時の画像だが、

スクリーンショット2016-01-1601.32.57

このなかで「美味いコンフィとされる」のは、上段:なし、中段:一番右、下段:右から2番目だろう。火を通し過ぎずに、鴨の中に旨味を閉じ込めるための作業を「コンフィ」と言うのだが、写真のほとんどが加熱しすぎ。高温過ぎたか放ったらかし過ぎたか、骨の部分が爆発してしまっている。旨味が外に出てしまった状態だ。結果、パサパサしたコンフィを誤魔化すためのソースが添えられているに過ぎない。

このように、料理写真からある程度そのお店の技術やレベルはわかる。

ではイタリアンの場合は?それは「温泉卵(半熟卵)のカルボナーラ」というメニューがあるかどうか?だと思う。

まずカルボナーラというのはそもそも「炭焼き風」という意味を持つ。カルボナーラつまりカーボン、炭である。燻された豚肉とクリームソースに、まるで炭の粉が飛んだかのように黒胡椒をまぶしたパスタ。それがカルボナーラ。

このパスタの肝は、生クリームのソースにパルメジャーノ・レッジャーノと生卵をなじませる事。手早くできなければ、ベトベトした食感とだらしないルックスで、全然美味くない。これは料理人の腕の見せ所だ。

しかし、「温泉卵」を使えば見た目も楽しいしソースもさらさらした状態でお客様に提供できる。イタリアンの修行なんぞ、なんら意味を持たないカルボナーラ出来上がりという訳だ。

若い頃の俺はこういう料理が大嫌いで、「そんなもんは技術のない奴らが誤魔化して仕事してるだけや!」と思っていた。

でも今は違う。最優先事項は「お客様が喜んでくれるかどうか?」だ。店の技術なんて、お客様が喜んでもらえているかどうかと比べたら、ずっと後。

 

温泉卵って、イイよね。生卵がきれいにソースになってしまっているより、温泉卵がパスタの上に乗っかってたらなんとなく嬉しいもの。見た目も楽しいし、食べたら美味しいし。

ついに最も嫌っていたメニューを「イヤ、これってイイ物だなぁ」と思えるほどに、自分が変化して来た事が嬉しい。

カミサン特製のローストポークと温泉卵のカルボナーラ出来ました。まだメニューブックには載りませんが、どうぞお気軽にご注文してくださいませ。


よく読まれている日記